これまで、①大阪高判H21.12.28(成田喜達裁判長)の違憲・違法判決、②広島高判H22.1.25(廣田聰裁判長)の違憲・違法判決、③東京高判平22.2.24(富越和厚裁判長)の違憲状態判決、④福岡高判(那覇支部)平22.3.9(川邉義典裁判長)の違憲状態判決と、4つの歴史的な判決がでました。
この4つの判決では、いずれも、一人別枠方式は、既に本件選挙時には、その合理性を失っていたとして本件選挙は違憲・違法もしくは違憲状態であったとし、少なくとも2倍を超える投票価値の不平等は憲法に違反すると判示しました。
これらの判決は、下級審である高等裁判所が、一人別枠方式に関して一定の合理性を認めていた最高裁判決に一歩踏み込む判断をしたという、歴史的な素晴らしい判決です。しかし、判決理由には「2倍」という文言が見られ、その文言が、一人一票実現への足かせになる懸念がありました。
そして、昨日、福岡高裁(森野俊彦裁判長)が出ました。
福岡高裁判決では、遂に、私達が待ち望んでいた「一人一票」が明示されました(但し、判決文では「誰もが過不足なく一票を有する」との表現になっています)。
初の「一人一票」判決です。
本判決は、選挙区割りの際に都道府県の境を考慮するか否かの論点については私共の主張を採用しなかったものの、その他の主張に関しては、その主張を概ね容認し、唯一、意見を異にした都道府県境の扱いについても、仮に「都道府県という行政区画の枠を前提として選挙区画を定めた結果が投票価値の平等を損ない、これを没却するような事態に至る場合には、都道府県を取り払ってでも平等価値の実現という理念に沿う選挙区画を定めるべきことはいうまでもない」(判決文20頁7~10行)と判示し、一人一票の原則を明示しています。
また、国会の不作為についても、一人別枠方式に関する判決理由のところで、「区画審設置法3条1項は、・・・較差が2倍以上にならないようにする旨規定していて、較差が2倍にならないようにとの配慮をしているが、法文の規定の趣旨ないし書きぶりからみて、出来る限り1対1に近づけることを目標としておらず、「誰もが過不足なく一票を有する」ことを指向していない点で、これを合憲的に解釈することは困難である。」(判決文24頁6~11行)と断じています。
判決文は、非常に明瞭で分かりやすく書いてあります。
是非、判決文を読んで下さい。
尚、余談になりますが、橋下大阪府知事は、昨年末の大阪違憲訴訟(大阪高判H21.12.28)で選管が上告したことに対し、登庁の際の報道陣の取材に応じ、「一人一票が原則。国は原則にあうように制度設計をするべきで、上告はあり得ない」とコメントされたそうです(【橋下日記】(8)MSN産経ニュース2010/01/08)。
3/9判決当日の沖縄は、小雨とたまに強風の吹く一日でした。
結果は、投票価値の不平等の主な原因として「一人別枠方式」を挙げた、「違憲状態」判決でした。
法廷内では、まず、川邉義典裁判長により主文が読み上げられ、その後裁判所書記官の方が、当事者、代理人、傍聴人全員に判決要旨を配布した後、川邉裁判長が、その内容を読み上げられました。
→ 福岡高裁(那覇支部)平成22年3日9日判決(判決理由等の説明)
2日後の東京高裁(稲田龍樹裁判長)判決は、驚くことに合憲判決。
私共は、従前の平等原則の論点からのみの主張に加え、国の統治の仕組みとしての民主主義の多数決ルールの論点、利害関係者の議決権行使禁止の論点、国政に対する影響力の平等の論点、また信託論等、いままでに議論されてなかった非常に説得的で強い主張をしました。
しかしながら、この東京高裁判決は、ただ従前の最高裁判決を踏襲するもので、特にコメントする余地もありません。
私共の主張に真正面に向き合い、判断されたのが、東京高裁判決の翌日に言渡された福岡高裁平成22年3月12日判決(森野俊彦裁判長)です。