升永ブログ

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2020/11/18大法廷判決について、4つの点を整理しました。

2020/11/18大法廷判決について、4つの点を整理しました。

2020/11/18大法廷判決について、下記4つの点を整理しました。
ご一読いただければ幸いです。

1 2020年大法廷判決は、H26年大法廷判決の判例に従って、抜本的見直しの参院選制度改革の実現を要求している:

2020年大法廷判決は、下記の通り、H29年大法廷判決の不当な判例変更に従うことを改め、「都道府県を選挙区の単位とする選挙制度自体の見直し」を要求する、元のH26年大法廷判決の判例(H24年大法廷判決、同21年大法廷判決も同じ判例です)に従っていると解されます。

① 即ち、H26年大法廷判決13頁は、

「都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の仕組みが、長年にわたる制度及び社会状況の変化により、もはやそのような較差の継続を正当化する十分な根拠を維持し得なくなっていることによるものであり、同判決(H24年大法廷判決 引用者注)において指摘されているとおり、上記の状態を解消するためには、一部の選挙区の定数の増減にとどまらず、上記制度の仕組み自体の見直しが必要であるといわなければならない。」

と【都道府県を選挙区の単位とする従来の制度の廃止を伴う、選挙制度の仕組みの見直しの必要性】を明言しています。

② しかし、H29年大法廷判決9頁は、

「しかし、この判断は、都道府県を各選挙区の単位として固定することが投票価値の大きな不平等状態を長期にわたって継続させてきた要因であるとみたことによるものにほかならず、各選挙区の区域を定めるに当たり、都道府県という単位を用いること自体を不合理なものとして許されないものとしたものではない。」

と判示していました。

この判示は、H26年大法廷判決の判示の不当な判例変更です。

③ 2020年大法廷判決では、当該H29年大法廷判決の判示の文言が消えました。

【都道府県を選挙区の単位とすることを容認する、当該H29大法廷判決の当該文言が、2020年大法廷判決から消えたということ】は、2020年大法廷判決は、H29大法廷判決の判例に従わず、H26年大法廷判決の判例(すなわち、都道府県選挙区の単位とする従来の選挙制度自体の見直しを要求するという判例)に従ったと解されます。

④ 従って、2020年大法廷判決は、H26年大法廷判決の判例に従って、抜本的見直しの参院選制度改革の実現を要求していると解されます。

 

2 抜本的見直しの選挙改革としてどうすべきかについて:

参院の選挙改革委員会は、過去10年間、議論を続けました。しかし、過去10年間で、ブロック制改革案しか出てきませんでした。今後は、多数の合区からなる合区案が出てくる可能性があります。しかし、国は、当大法廷で、合区制は自民政党内で反対が強く、実現困難であると主張しています。そうであれば、残る現実的な抜本的改革案は、ブロック制になると思われます。

2011年の西岡武夫参議院議長の参院選挙改革案(9ブロック制)では、人口の50.20%が参院議員の過半数(50.80%=63人÷124人×100%)(すなわち、全124人中の63人)を選びます。これは、厳格な人口比例選挙です。

2018年に、公明党、日本維新は、11ブロック制選挙制度改正案を国会審議で提案しており、共産党も9ブロック制を提案しています。これらはいずれも厳格な人口比例選挙です。

私の予想では、まず衆院選で人口比例選挙が成功して、その後参院選で人口比例選挙が成功するということを漠然と考えていました。

しかし、参院選のブロック制(人口比例選挙)の第一順位での成功の可能性が、この2020年大法廷判決で出てきました。

 

3 2020年大法廷判決は、H25(2013)~H30(2018)年までの、右肩下がりの5個の最高裁判決のベクトルを、再び右肩上りのベクトルに変えた:

① 2009年、私どもが、全国で人口比例選挙訴訟を提訴した時、私は、この提訴は山を動かそうとするようなもので、向う200年先でも一票の格差は変っていないだろうと思っていました。それを覚悟のうえ、本件訴訟を始めました。

しかし、幸運にも、H23年(衆)とH24年(参)に、2個の違憲状態大法廷判決(竹﨑最高裁長官)が出ました。

しかし、H25(衆)、H26(参)、H27年(衆)に、それからズルズル後退した3個の違憲状態大法廷判決が続き、H29(参)、H30(衆)には、更に大幅後退の2個の留保付き合憲判決が出ました。

② 本2020年大法廷判決(参)は、H25(2013)~H30(2018)年までの、右肩下がりの5個の大法廷判決(すなわち、H25、H26、H27、H29、H30年の5個の大法廷判決)の右肩下りのベクトルを右肩上りのベクトルに変えたもので、その点で大きく評価されると思います。

③ 私には、最高裁は、大法廷を開いて多数決で決めれば、先行する大法廷判決の判例を自由自在に変えられると思って、2013~2019年まで選挙無効訴訟の判決を書いてきたようにみえました。2020年大法廷判決が、選挙無効訴訟の最高裁大法廷の歴史上初めて、前の大法廷判決(H29大法廷判決)に従わず、それ(H29年大法廷判決)より前のH26大法廷判決に従ったと思われます。

このことは、特筆さるべき、重要なことと思います。

 

4 2020年大法廷判決は、漸進的に選挙制度の改革を行うことは許容されるが、最終的には抜本的見直しは実現さるべきであると判示した:

① 2020年大法廷判決13頁の文言:

「しかしながら、前記のような平成30年改正の経緯及び内容等を踏まえると、・・(略)・・・数十年間にわたって5倍前後で推移してきた最大較差を前記の程度まで縮小させた平成27改正法における方向性を維持するよう配慮したものであるということが出来る。また、参議院選挙制度の改革の際しては、憲法が採用している二院制の仕組みなどから導かれる参議院が果たすべき役割等も踏まえる必要があるなど、事柄の性質上慎重な考慮を要することに鑑みれば、その実現は漸進的にならざるを得ない面がある。そうすると、立法府の検討過程において較差の是正を指向する姿勢が失われるに至ったと断ずることはできない。」

上記の「その実現は漸進的にならざるを得ない面」のなかの「その実現」とは、H27年改正法の実現を指すと解されます。

② 同法附則7条は、『次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る』旨定めています。

ということは、同大法廷判決は、漸進的に選挙制度の改革を行うことは許容されるが、「選挙制度の抜本的見直しは、最終的には実現さるべきである」と判示していると解されます。

これも、本判決の重要ポイントだと思います。

以上

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